光るセンスのよい文章と、浅い人間関係の組み合わせ。二十七歳サラリーマンの「オレ」と、近くに住む美容師たちとの日々。その「桂美容室」の店長はカツラをかぶっている! 山崎作品がチャーミングなのは、こうした小さなアイディアの積み重ねにもよると思う。
主人公の自分の心情の掘り下げ方にも光るところがあり、どきりとさせられる。いわく「オレは他人によってなんとか自分の形を保てている」「誰もオレと繋がろうとしない」。それに比べて、登場人物たちの心の絡み合いは、あまりにも浅すぎるのではないかなあ。洒脱でクールな会話は耳に心地よいが、心には残らない。「モネって、自分にも他人にも興味がなさそうですよね」というせりふがあるけれど、山崎さん本人にもそういう傾向があるのだろうか。